「 Augmented Reality 」拡張現実
「AR」とはなにか?
「AR」とは英語の「 Augmented Reality 」の略になり、日本語では「拡張現実(かくちょうげんじつ)」と訳されることが多くなっています。
コンピュータを利用して人が見て感じている現実に情報を付加させることを指します。
例えば“椅子”を購入しようとしているとします。
その場合、設置する“部屋”に購入しようとしている“椅子”を置いたイメージを頭の中で想像すると思います。
しかし、頭の中でそのサイズや色味やバランスなど細かい箇所までシミュレーションするのは非常に難しい作業です。
そこでARを活用すると、例えばスマートフォンのカメラを覗けば”現実(部屋)“に”情報(椅子)“を重ねあわせたイメージを見ることができるのです。
このように、ARは創造やシミュレーションをサポートする仕組みのことであり、ARを活用すれば現実とデジタルを組み合わせた新たな視覚世界を提供することが可能になるのです。
さらに、位置や画像・物体に紐つけて情報を表示するという手法に着目すると、ユーザーの生活の様々なシーンでの活用が考えられます。
「AR」の歴史
ARは、2009年に「セカイカメラ」などのスマートフォンアプリがリリースされ始めて以来、スマートフォン端末の普及に伴い市場も成長を続けています。
Juniper Research社の2012年8月のレポートによると、スマートフォン端末をベースとしたモバイルARの市場は今後も伸び続け、2017年には52億ドルに達するとのことです。
ARは、これまではその「人目を引くインパクト性」に着目し、バズ効果を期待したプロモーション事例が多く出ていました。 アプリを落として驚きの体験をした方も多いかと思います。
しかし、それらの多くは短期的な施策であり、ARがユーザーの生活に浸透してきているかと言われるとまだそうとは言い切れない現状がありました。
そして、近年…
「スマートフォン」の利用者成長
2015年4月24日、国内の携帯端末メーカーが独自のOSを搭載する従来型携帯電話、いわゆる「ガラケー」の生産を、2017年以降に中止すると報じました。
スマートフォン(スマホ)の普及が進み、メーカー各社にとってガラケーの開発は重荷になっていました。 以降はOSを米グーグルのAndoroidに統一した携帯端末(ガラホ)に統一するようです。
調査会社のIDC Japanが2014年12月10日に発表した「国内家庭市場におけるスマートフォン/タブレット/PCの利用実態に関する調査」によると、スマホの所有率は62.3%、2013年7月の調査と比べて12.5ポイント上昇しています。
それでは、ARは今後どのような可能性を秘めているのでしょうか?
ユーザーの生活により根差したサービスとして、ARが持つ「実用性」や「利便性」に着目し、最新の事例を踏まえてスマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスに関するARの新たな活用方法は?
また急成長中の、ウェアブルとの連動性はいかに!
ARの最新活用手法
ARによって新たな「利便性」や「実用性」を実現し、ユーザーの生活をより便利で豊かにするようなサービスは、国内外で徐々に出始めています。
今回は、いくつかジャンル別にピックアップしてご紹介します。
■ 学習×AR
3D化することで教科書よりも分かりやすく楽しい学習を実現
□ ARを活用し学びの楽しさを提供「ARレントゲン」
特定のマーカー又はお札を用意し、スマートフォンのカメラで写すと画面上に動物や飛行機、建物などの3Dオブジェクトが表示されます。
そこへ、別のマーカーを写すと、画面上ではルーペのように表示され、ルーペの部分に映し出された部分だけ3Dオブジェクトの内部の構造が表示されるようになっています。ARマーカーを使って好奇心を引出し学ぶ楽しさを提供している事例になります。
「ARレントゲン」アプリ
□ NASAが開発した火星探査機の学習用アプリ「Spacecraft 3D」
火星探査機が3Dで表示され、ユーザーは様々な角度から探査機を見て構造を学ぶことができます。
「Spacecraft 3D」アプリ
■ 整備・修理×AR
作業時に説明書と照らし合わせる負荷をなくし、作業効率アップを実現
□ 富士通が自社工場で実際に導入した、ARを用いた作業ミス防止サービス
富士通は、工場内の配管の点検や保守作業時に、タブレットを配管に付けたARマーカーにかざすと、過去の作業履歴が表示されたり、そこに点検結果を入力したりできるサービスを発売しました。
自社工場で実際に導入した際、重大なミスの大幅な減少につながったとしています。
富士通のAR統合製品「FUJITSU Software Interstage AR Processing Server」紹介ページ
□ 車の整備方法を分かりやすく案内するサービス(デモ版)
また、イタリアのイングローブテクノロジーズ社(Inglobe Technologies)は、車のボンネット部分にタブレットをかざすと、各部位の説明が表示されたり操作が必要な場所をアニメーションで説明してくれるサービスのデモを公開しています。
イングローブテクノロジーズ社が運営する「AR-media」サイト
■ 観光・ガイド×AR
実際の風景上にルート案内や施設案内を表示することにより迷わず効率的な観光を実現
□ まち歩き観光ガイドのARナビゲーションアプリ「おもてナビ」
行きたい観光ルートを選択しカメラを周囲にかざすと、画面上では行くべき方向を矢印で表示したり周辺施設がエアタグで紹介されるなど、専属ガイド付きのような観光を楽しむことができます。
音声ガイドや多言語にも対応し、現在は全国各地に対応し地域振興を促進しています。
「おもてナビ」紹介サイト
□ ARで目的地まで誘導するナビアプリ「MapFan eye」
目的地を入力し周囲にカメラかざすと画面上に徒歩ルートが表示され辿るだけで目的地へ向かうことができます。
「MapFan eye」紹介サイト
また、今年1月にARの新サービスを発表したKDDIも、同社のナビアプリ「auナビウォーク」「au助手席ナビ」に「ARナビゲーション」機能を追加しARによるナビゲーションを提供しています。
■ 通販×AR
カタログに乗り切らない付加価値をARで提供、スムーズな購入を実現
ニッセンや千趣会では、自社の商品カタログにカメラをかざすと商品の詳細情報をチェックできるアプリを提供しています。
気になった商品をすぐに購入できる利便性に加え、ニッセンでは商品を着たモデルを3Dで表示させ、360度様々な角度からコーディネートを確認することができます。
ニッセン「カタログカメラ」アプリ、千趣会「ベルメゾン 「カタログプラス」アプリ
■ スーパー×AR
スーパーにおける買い物体験をちょっとした隙間時間に提供、新たな販売形態を実現
□ 地下鉄のホームやバス停で買い物ができる「Homeplus Subway Virtual Store」
スーパーを運営するTescoは、韓国の地下鉄ホームやバス停に商品が並んだポスターを配置。スマートフォンのカメラを商品にかざして商品サイトにアクセス、手軽に購入することができます。注文した商品は自宅に配送されるという仕組みになっており、通勤や通学中の待ち時間を活用して買い物体験を提供するという新たな取り組みになっています。またこの取り組みはUKの空港でも実施されるなど徐々に範囲を広げています。
「Homeplus Subway Virtual Store」で利用する「Tesco App」アプリ
他にも、バーチャル試着、家具配置シミュレーション、建築モデリングシミュレーションなど、特に海外では様々な活用事例が出てきています。
ユーザーのリアルな生活をさらに便利に豊かにする可能性を、ARはまだまだ秘めていると感じます。 今後もARの動向には注目です。
いろいろなアイディアをサポートするツール
動く新聞!
「魔法新聞」のように印刷物である新聞が動き出し、しゃべります。
それだけではなく、締め切り後の記事でも新しい情報を設定することで、新聞紙面を最新の情報に変えることもできるのです。
災害や事故の画像が動き音が出ることで、紙だけでは伝えきれなかったものを伝えることもできます。
スタンプラリー
リアルな場所ならではの体験:その場所に行かないと体験できない、それをフックに生活者を動かしていく仕掛けが、ARスタンプラリーです。
地域の活性化、来店促進、プロモーションなどで活用できます。
シミュレーション&フィッティング
簡単に置くことができない家具、自動車などを実際にそこにあるかのように出現させることができます。
また通販サイトなど、実際に服を手にとって試すことができない場合でも、ARで試着をしてコーディネーションをチェックすることができます。
髙野陽平
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