一般的に、企業の寿命はいったいどれくらいあるでしょうか?
その答えは、失望するほど短いものでした。
書籍『企業生命力』で示された調査結果によると、1970年の総収入などに基づく全米上位500社のうち、実に3分の1もの企業が1983年までに倒産、解散、あるいは、他社に合併された状態になっていたことがわかりました。
多国籍企業、大企業の場合、平均寿命は40年ほど、さらに中小企業の場合は10年ほどでしかないというのです。
新興企業の4割近くが 10年ももたない ことがわかりました。
日本では奈良時代からある企業の存在が知られ、江戸時代からある企業も多くあります。
また、ヨーロッパでも同様です。
それでも全体として見ると、日本とヨーロッパの企業の平均寿命は12.5年ほど だそうです。
会社の寿命は、多く人にとっての平均余命よりも短いのです。
たとえば、75歳、あるいは80歳生きる人は、その一生のあいだに、平均で、大企業が2つ潰れると考えると企業の寿命の短さを実感いただけるでしょう。
それにしても、なぜ多くの企業の寿命はそんなに短いのでしょうか?
シェルの元戦略担当副社長で現在SoL UK(組織開発協会英国コミュニティ)の顧問を務めるアリー・デ・グースは、前述の『企業生命力』の中で、企業を経済の主体として考えたとき、利益の最大化、効率化を図って株主にリターンをだそうとする考え方は、企業が永く続くことと相反している場合が往々にしてあると述べています。
言い換えれば、効率を追求すれば追求するほど、企業の寿命は短くなる傾向があるというのです。
参考までに、株主は投資先を流動的に変えることが最善と考える一般則があるので、投資している企業に永く続いてほしいというこだわりは持たないことが普通です。
その流動性は、1940-1975年には株式の平均保有期間が約7年でしたが、2007年までには7ヶ月まで短くなり、さらに今日ではコンピューター制御の発注によってミクロ秒単位で動くので、平均は分単位ではないかとも言われてます。
企業が寿命を犠牲にしてでも効率化だけを狙うべきか、ほどほどの効率でも永続すべきかは、誰の視点で見るかによって変わるでしょう。
投資家なのか、それとも顧客や社員や取引先や地元地域なのか。
投資家でも、年金など長期に安定したリターンを出したい投資家なのか、市場が荒れているときにこそ利益を狙いやすい投機的な投資家なのか、などです。
逆に、長寿命の企業、特にその規模が大きいにもかかわらず永く操業し続けている企業の特徴として、以下の4つのポイントを挙げています。
1.環境と調和して適応すること。
2.強いアイデンティティ・独自性をもっているということ。特に、何らかの環境変化が起きた際に強い団結力を示すこと。
3.意思決定が現場で分散してなされることに対して、中央が寛容であること。これは2つ目のアイデンティティと深く関わります。アイデンティティも独自性もない中で、各々のプレイヤーが勝手に動くと混乱状態に陥るからです。一方、共通のアイデンティティがあれば、各々が分散しながらも全体最適に向けて動きやすくなります。
4.余裕やあそびを常にもっていること。アリー・デ・グースは例として資金を挙げ、長寿企業は大きな借金はけして抱えない一方で、事業機会が生じた際には機動的に投入できるように潤沢な手元資金を保有していることを指摘します。逆に借金ばかりしている企業は、本当に資金が必要なときに限ってそれ以上借りることができなかったりします。
以上の、「環境に適応する」「アイデンティティがしっかりある」「分散型の意思決定ができるような寛容さをもつ」「余裕、あそびを常にもっている」といった特徴を持つ企業は永く続く企業です。
一方、利益や効率の最大化を図ることに焦点をあてる企業ほど、寿命が短い傾向にあることが、調査の結果わかったことでした。
髙野陽平
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